書籍
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ツーリズモ
バルセロナ、リスボン、パリ - ひとり旅のようなふたり旅
原田 郁子 文 - 写真:原田 奈々
- Ikuko Harada "tourismo"
- 2006-06-16
- ISBN: 4-86020-180-9
- ¥1,995
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A5横
128ページ
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- フルカラー
歌にCMに大活躍のクラムボンの原田郁子と妹の写真家、原田奈々によるフォトエッセイ。
スペイン、ポルトガル、フランス……姉妹がひろい集めたかけがえのない旅のかけらたち。
「ねぇちゃん」と「なぁちゃん」は、
まるで家なき子の姉妹が、
世界のはてを旅してるみたい。
高山なおみ(帯文)
《旅のはじまりは最悪だった……》。原田郁子が音楽活動を始めてから十年目にして、初めてとった長期休暇。そこで彼女は妹と初めてのヨーロッパ旅行を計画する。初体験づくしの長い旅は、スーツケースの車輪は壊れるは、小銭袋を無くすは、ガイドブックを忘れてくるは、成田エクスプレスは人身事故で遅れるはで最悪のスタートをきることに―。最初に到着したスペインは肌寒く、姉妹喧嘩も絶えない。しかし、ポルトガルの地に足を踏み入れたとたん、彼女のなかで、なにかが変わりはじめる……。
脚色いっさいなしの映画のような珍道中と、ほかでは読めない彼女の内面や、旅先で運命的に出会った人たちとの不思議な交流を惜しみなく綴り、その背景となった美しいヨーロッパの風景をオールカラーでお見せします。読めばきっと旅にでたくなる!
【ちょっと立読み】
列車
目が覚めると、朝だった。
ガタガタ音がうるさくて眠れないかと思ったけど。
食堂車でワインを飲んでから。死んだように眠ったらしい。
リスボンに向かう寝台列車。
この汽車に乗れたことは、いやはや奇跡的だった。
「乗り物には余裕をもって乗るべし」
その教えをわたしは子供の頃、聞き逃してしまったらしい。
どうしてこんなに走るんだ? とういほどに。
ギリギリになってしまうことがある。
この汽車に乗るときもそうだった。
バルセロナからマドリードに着いたわたしたちは。
寝台列車の発車する駅はここではないことを知る。
てっきり同じ駅でホームを乗り換えるのだと思っていたら。
電車で30分くらい行った別の駅から発車すると言う。
調べなかったわたしたちが悪いのだが。つべこべ言ってるヒマはない。
出発時間まで1時間を切ってきた。
どうやって行けばいいか窓口で聞いたが。
スパニッシュ訛りの英語でさっぱりわからない。
タクシーも長い列ができている。血の気がサーッと引いてゆく。
一番早いのがどの線かわからないまま。地下鉄のホームへ降りてみた。
が。路線図をよく見てみると。遠まわりっぽい。
もし今夜乗りそびれたら。マドリードに1泊するしかないんだけど。
宿を探す体力は残っていなかったし。
バルセロナより治安の悪いマドリードでスーツケースを持ってうろつくのは。
正直怖い。やっぱり何としても間に合わなくては。
賭けみたいにして別の列車に飛びのった。
確か3つ目の駅だったはずだけど。
ひと駅ずつが恐ろしく長くてなかなか次の駅につかない。
しかも特急なのか各駅なのかもわからなかったから。通り過ぎちゃってたらどうしよう。
どうにかなりそうだったので。わたしたちは手を合わせてお祈りした。
死んだおじいちゃんにお祈りした。
「リスボンに行けますように」
その駅に着いたのは発車2分前。
だけどどのホームに乗り換えればいいのか。どれが寝台列車なのかわからない。
キョロキョロしていると。男の人が「どこへいくんだ?」と聞いてきた。
「リスボン!」切符を見せると「急げ」と言って走り出した。
わたしの重たいスーツケースを持ってどんどん走った。「急げ、急げ」と叫びながら。
わたしたちも走った。とにかく必死で走った。
発車ベルが鳴り渡るホームに。リスボン行きの寝台列車は止まっていた。
わたしたちは髪の毛1本分。まさに危機一髪で滑り込んだ。
もうほとんど映画のようだった。
プシーーーーーッ。 背中でドアのしまる音を聞いた。
はぁ。はぁ。はぁ。走りすぎてキモチワルイ。
頭がマッシロでなにがなんだかわからない。
間に合ったということが信じられない。
「あ!」と思って振り返ると。さっきのおじさんの姿はなかった。
その瞬間チカラがドッと抜けて。涙がでた。
おじさんにお礼できなかった。
アリガトウ。あなたが居なかったら。
わたしたちどうなってたかわかんないよ!
って伝えたかったのに。
あのおじさんはてっきり駅員さんだと思っていたが。
なぁちゃんは「ちがうよ。お客さんだったんだよ」と言っていた。
ほんとにそんなことがあるんだろうか。
荷物を持ってあんなに本気で走ってくれるなんてことが。
それを思うと。胸がいっぱいになる。


































